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里は荒れぬ尾上の宮のおのづから
待ち来し宵も昔なりけり

歌の意味
里は荒れてしまった。山の尾上の宮で、おのずと人を待ち続けてきた宵も、今では昔のことになってしまった。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1313

詞書「水無瀬の恋十五首の歌合に」
 和歌所と水無瀬の歌合の恋歌を並べる一連の二首目である。里は荒れてしまった、尾上の宮でおのずと待ち続けてきた宵も今では昔のことだと詠む。詞書によれば、水無瀬の恋十五首の歌合に出詠した歌である。
 作者の「太上天皇」は後鳥羽院である。高倉天皇の皇子で、譲位後に院政を行い、新古今和歌集の撰進を命じた。太上天皇は譲位した天皇の称で、本集成立時の院である後鳥羽院を指す。
 水無瀬は摂津国の地で、後鳥羽院の離宮があった。水無瀬の恋十五首の歌合は、この地で恋の題十五首を歌人たちに詠ませて番えた歌合である。

 初句「里は荒れぬ」は六音の字余りで、里は荒れてしまった、の意の初句切れである。前歌の初句と同じ言い出しであり、二首が並べて置かれている。
 二句「尾上の宮の」の「尾上」は山の峰であり、尾上の宮は山上の宮殿を言う。
 三句「おのづから」は、自然と、いつしか、の意である。二句の「をのへ」と音を重ねて調子を整えている。
 四句「待ち来し宵も」は、待ち続けてきた宵も、の意である。本巻にたびたび詠まれた、人を待つ宵を受ける。
 結句「昔なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆である。待つことさえも昔のこととなったと気づく嘆きで結ぶ。前歌の寂蓮が空しい寝床に吹く秋風を詠んだのに対し、ここでは待つ宵そのものが過去となった時間の隔たりを詠み、同じ初句を別の尺度で扱っている。

をのへ:山の峰
をのへのみや:山の峰にある宮殿
作者
後鳥羽院
出典
新古今和歌集
前の歌
里は荒れて空しき床のあたりまで 身はならはしの秋風ぞ吹く
次の歌
もの思はでただおほかたの露にだに 濡るれば濡るる秋の袂を