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もの思はでただおほかたの露にだに
濡るれば濡るる秋の袂を

歌の意味
もの思いをしなくても、ただ世間並みの秋の露にさえ、濡れれば濡れてしまう秋の袂であるのに。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1314

詞書は前の歌に続き「水無瀬の恋十五首の歌合に」
 和歌所と水無瀬の歌合の恋歌を並べる一連の三首目である。もの思いをしなくても、世間並みの露にさえ濡れれば濡れる秋の袂なのに、と詠む。詞書は前歌に続き、水無瀬の恋十五首の歌合に出詠した歌である。
 作者の「有家朝臣」は藤原有家である。藤原重家の子で、新古今和歌集の撰者の一人である。朝臣は五位以上の者に付ける敬称である。

 初句「もの思はで」は六音の字余りで、恋のもの思いをしなくても、の意である。
 二句「ただおほかたの」は、ただ世間一般の、ありふれた、の意である。
 三句「露にだに」の「だに」は、〜さえ、の意である。恋の涙ではなく、ふつうの秋の露にさえ、と軽いものを挙げる。
 四句「濡るれば濡るる」は、濡れれば濡れる、の意で、同じ語を重ねて、秋の袂の濡れやすさを示す。
 結句「秋の袂を」の「を」は詠嘆を込めた逆接で、秋の袂であるのに、の意である。言いさして、まして恋のもの思いの涙が加われば、という重いものを言外に類推させている。

おほかた:世間一般、ふつう
たもと:袖、袖の下の垂れた部分
作者
藤原有家
出典
新古今和歌集
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