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おもひいる深き心のたよりまで
見しはそれともなき山路かな

歌の意味
深く思いつめて山に分け入った深い心の、その手がかりにと見ておいたものまで、それとも分からなくなってしまった山路であることよ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1317

詞書は前の歌に続き「和歌所の歌合に深山恋といふことを」
 和歌所と水無瀬の歌合の恋歌を並べる一連の六首目で、一連の最後の歌である。深く思いつめて山に分け入った心の手がかりにと見ておいたものまで、それとも分からなくなった山路だと詠む。詞書は前歌に続き、和歌所の歌合で深山恋の題を詠んだ歌である。
 作者の「藤原秀能」は、後鳥羽院に北面の武士として仕え、歌人としても重んじられた人物で、承久の乱の後に出家して如願と号した。

 初句「おもひいる」は、深く思いつめる意と、山に分け入る意とを掛ける掛詞である。
 二句「深き心の」は、深く思う心の、の意で、山の深さに恋の深さを重ねる。
 三句「たよりまで」は、手がかりまで、の意である。恋しい人のもとへ行く道しるべとして心にとどめておいたものを言う。
 四句「見しはそれとも」は、見ておいたものも、それだとも、の意で、結句に続く。
 結句「なき山路かな」は、それと分からない山路であることよ、の意の詠嘆である。前歌の家隆が深山で訪れのなさを嘆いたのに対し、ここでは自ら深山に分け入って恋の道に迷うさまを詠み、深山恋の題を反対の側から詠んでいる。

おもひいる:深く思いつめる意と、山に分け入る意を掛ける
たより:手がかり、よりどころ
やまぢ:山の中の道
作者
藤原秀能
出典
新古今和歌集
前の歌
さてもなほ問はれぬ秋の夕は山 雲吹く風も峰に見ゆらむ
次の歌
ながめても哀れと思へおほかたの 空だに悲し秋の夕暮れ