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消えわびぬうつろふ人の秋の色に
身をこがらしの森の白露

歌の意味
消えるにも消えられず、苦しみ嘆いている。心変わりしてゆく人の、飽きの色の見える秋に、我が身を焦がして、木枯らしの森の白露のように。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1320

詞書は前の歌に続き「千五百番歌合に」
 秋の景物に寄せて恋の嘆きを詠む一連の三首目である。心変わりしてゆく人の秋の色に身を焦がし、木枯らしの森の白露のように消えるにも消えられずにいると詠む。詞書は前歌に続き、千五百番歌合に出詠した歌である。
 作者の「定家朝臣」は藤原定家である。藤原俊成の子で、新古今和歌集の撰者の一人である。のちに新勅撰和歌集を単独で撰進した。
 木枯らしの森は駿河国の歌枕で、名に木枯らしを負う森として詠まれた。
 なお本文の結句は「森の白露」とあり、読み仮名の行の「もりのしたつゆ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「消えわびぬ」は、消えるにも消えられずに苦しんでいる、の意の初句切れである。露の消えることと、命の消えることとを重ねる。
 二句「うつろふ人の」は、心変わりしてゆく人の、の意である。前歌の「うつりし」を受ける。
 三句「秋の色に」は六音の字余りで、秋の色に、の意である。秋に人の心の飽きを重ね、その色が見えることを言う。
 四句「身をこがらしの」の「こがらし」は、身を「焦がらし」と、「木枯らし」の森とを掛ける掛詞である。
 結句「森の白露」は体言止めである。木枯らしに吹かれて今にも消えそうな森の白露に、恋に身を焦がして消え入りそうな我が身を重ね、初句の「消えわびぬ」へと呼応させている。

きえわぶ:消えるにも消えられずに苦しむ
うつろふ:心が移り変わる
こがらし:身を焦がす意と、木枯らしの意を掛ける
作者
藤原定家
出典
新古今和歌集
前の歌
言の葉のうつりし秋も過ぎぬれば 我が身時雨とふる涙かな
次の歌
来ぬ人を秋のけしきや更けぬらむ 恨みに弱るまつむしの声