来ぬ人を秋のけしきや更けぬらむ
恨みに弱るまつむしの声
- 歌の意味
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来ない人を待つうちに、秋の気配もすっかり深まってしまったのだろうか。恨みに弱ってゆく松虫の声よ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 1321
詞書「摂政太政大臣家歌合に」
秋の景物に寄せて恋の嘆きを詠む一連の四首目である。来ない人を待つうちに秋の気配も深まったのか、恨みに弱ってゆく松虫の声だと詠む。詞書によれば、藤原良経の家で催された歌合に出詠した歌である。
作者の「寂蓮法師」は、俗名を藤原定長といい、藤原俊成の甥で、その猶子となった。新古今和歌集の撰者に任じられたが、撰進を前に没した。
初句「来ぬ人を」は、来ない人を、の意で、結句の「まつ」にかかる。本巻の第千二百八十三首、第千二百八十七首と同じ初句である。
二句「秋のけしきや」は、秋の気配が、の意である。「や」は三句の「らむ」と呼応する疑問である。
三句「更けぬらむ」は、深まってしまったのだろうか、の意の三句切れである。夜が更けることと、秋が深まることとを重ねる。
四句「恨みに弱る」は、恨みのために弱ってゆく、の意である。秋が深まって虫の声が弱るのを、待ちくたびれた恨みのためと見る。
結句「まつむしの声」の「まつ」は、「松虫」と人を「待つ」とを掛ける掛詞である。初句の「来ぬ人を」から「待つ」へと続き、来ない人を待って恨みに弱る心を、弱ってゆく虫の声に託している。
けしき:様子、気配
よわる:弱くなる、衰える
まつむし:松虫の意と、人を待つ意を掛ける
- 作者
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寂蓮
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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消えわびぬうつろふ人の秋の色に 身をこがらしの森の白露
- 次の歌
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我が恋は庭のむら萩うら枯れて 人をも身をもあきの夕暮れ