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知られじな同じ袖には通ふとも
誰が夕暮れと頼む秋風

歌の意味
知られはしないだろうな。同じように袖に吹き通ってくるとしても、誰の訪れる夕暮れと頼みにして吹く秋風なのかは。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1325

詞書は前の歌に続き「被忘恋の心を」
 秋の景物に寄せて恋の嘆きを詠む一連の八首目である。同じように袖に吹き通う秋風であっても、それが誰の訪れる夕暮れを頼みにする風なのかは知られまいと詠む。詞書は前歌に続き、被忘恋の題を詠んだ歌である。
 作者の「家隆朝臣」は藤原家隆である。藤原光隆の子で、藤原俊成に歌を学び、新古今和歌集の撰者の一人となった。のちに従二位に至り、壬生二品と呼ばれた。

 初句「知られじな」は、知られはしないだろうな、の意の初句切れである。前歌の初句「知らじな」を受身に改めている。
 二句「同じ袖には」は、同じように袖には、の意である。秋風は誰の袖にも同じように吹く。
 三句「通ふとも」は逆接仮定で、吹き通うとしても、の意である。
 四句「誰が夕暮れと」は、誰の訪れる夕暮れと、の意である。忘れられた自分の夕暮れか、新しく思われる人の夕暮れかを問う。
 結句「頼む秋風」は体言止めである。同じ秋風でも、訪れを頼みにできる人と、忘れられた人とでは意味が違うことを、外からは知られない心の内として示している。

かよふ:行き来する、吹き通う
たのむ:頼みにする、あてにする
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
前の歌
咽ぶとも知らじな心かはらやに 我のみ消たぬ下の煙は
次の歌
露払ふ寝覚めは秋の昔にて 見果てぬ夢に残る面影