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つくづくと思ひあかしの浦千鳥
波の枕になくなくぞ聞く

歌の意味
つくづくと恋のもの思いに夜を明かし、明石の浦の千鳥の鳴く声を、波を枕にした旅寝で、泣く泣く聞いている。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1331

詞書「千五百番歌合に」
 涙に濡れる袖と冬の景物に寄せて恋を詠む一連の二首目である。つくづくともの思いに夜を明かし、明石の浦の千鳥の声を、波を枕の旅寝で泣く泣く聞くと詠む。詞書によれば、千五百番歌合に出詠した歌である。
 作者の「権中納言公経」は西園寺公経である。内大臣藤原実宗の子で、のちに太政大臣に至り、西園寺家の祖となった。権中納言は本集成立時の官職である。
 明石の浦は播磨国の歌枕で、月や千鳥とともに詠まれた。千五百番歌合は、後鳥羽院が建仁元年(1201)に三十人の歌人に百首歌を詠ませ、翌年にかけて千五百番に番えて判を加えた、史上最大の歌合である。

 初句「つくづくと」は、しみじみと、じっと、の意である。
 二句「思ひあかしの」の「あかし」は、もの思いに夜を「明かし」と、「明石」の浦とを掛ける掛詞である。
 三句「浦千鳥」は、浦で鳴く千鳥である。冬の景物で、友を呼んで鳴く声が恋しさを誘うものとして詠まれた。
 四句「波の枕に」は、波音を枕辺に聞く旅寝の床に、の意である。袖に涙の波を思わせる。
 結句「なくなくぞ聞く」の「なく」は、千鳥の「鳴く」と、自分が「泣く」とを掛ける掛詞である。「ぞ」の結びで「聞く」は連体形となる。前歌の袖に落ちる鐘の音に続き、ここでは千鳥の声を聞きながら涙を流すさまを詠む。本巻の第千二百五十八首の中務の歌も「なくなくぞ見し」と同じ形で結ばれている。

あかす:夜を明かす意と、明石の浦の意を掛ける
うらちどり:浦辺にいる千鳥
なく:千鳥が鳴く意と、人が泣く意を掛ける
作者
西園寺公経
出典
新古今和歌集
前の歌
暁の涙や空にたぐふらむ 袖に落ちくる鐘の音かな
次の歌
尋ね見るつらき心のおくの海よ 潮干の潟のいふかひもなし