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ふりにけり時雨は袖に秋かけて
言ひしばかりを待つとせしまに

歌の意味
時雨は袖に降りしきり、我が身は古びてしまった。秋になったらと言ったばかりのあの言葉を、待とうとしていた間に。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1334

詞書は前の歌に続き「水無瀬の恋の十五首歌合に」
 涙に濡れる袖と冬の景物に寄せて恋を詠む一連の五首目である。秋になったらと言ったばかりの言葉を待とうとしていた間に、時雨は袖に降り、我が身は古びてしまったと詠む。詞書は前歌に続き、水無瀬の恋十五首の歌合に出詠した歌である。
 作者の「皇太后宮大夫俊成女」は俊成卿女である。皇太后宮大夫藤原俊成の孫で、その養女となった。源通具の妻である。

 初句「ふりにけり」の「ふり」は、時雨が「降り」る意と、我が身が「古り」る意とを掛ける掛詞である。「けり」は気づきの詠嘆で、初句切れとなる。
 二句「時雨は袖に」は、時雨は袖に、の意で、袖に降る時雨に涙を重ねる。
 三句「秋かけて」は、秋を期して、秋にかけて、の意で、四句の「言ひし」にかかる。秋になったら来ようという約束を言う。
 四句「言ひしばかりを」は、言っただけの言葉を、の意である。本巻の第千二百七十六首が本歌とした素性の歌の「今来むと言ひしばかりに」、第千二百七十七首の有家の歌の「言ひしばかりの」と同じ言い回しで、口先ばかりの約束を示す。
 結句「待つとせしまに」は、待とうとしていたうちに、の意である。倒置によって初句の「ふりにけり」に続け、秋の約束を待つうちに季節は時雨の冬へと移り、我が身も古びたことを示す。本巻の第千三百十九首の通具の歌も、時雨と「ふる」とを取り合わせていた。

ふる:時雨が降る意と、身が古びる意を掛ける
しぐれ:晩秋から初冬に降ったりやんだりする雨
作者
俊成卿女
出典
新古今和歌集
前の歌
見し人の面影とめよ清見潟 袖にせきもる波の通ひ路
次の歌
通ひ来し宿の道芝かれがれに 跡なき霜の結ぼほれつつ