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通ひ来し宿の道芝かれがれに
跡なき霜の結ぼほれつつ

歌の意味
あの人が通ってきた宿の道の芝草も枯れ枯れになり、訪れも途絶えがちとなって、足跡もない霜が結ぶように、私の心も晴れずにふさぎこんでいる。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 1335

詞書は前の歌に続き「水無瀬の恋の十五首歌合に」
 涙に濡れる袖と冬の景物に寄せて恋を詠む一連の六首目で、巻第十四の巻末歌である。あの人が通ってきた宿の道の芝草も枯れ枯れになり、足跡もない霜が結ぶように心もふさぎこんでいると詠む。詞書は前歌に続き、水無瀬の恋十五首の歌合に出詠した歌である。
 原文には作者名がなく、前歌に続いて俊成卿女の歌である。俊成卿女は、藤原俊成の孫で、その養女となった。源通具の妻である。

 初句「通ひ来し」は、あの人が通ってきた、の意である。「し」は過去で、通いがすでに過去のものとなったことを示す。
 二句「宿の道芝」は、宿へ通う道に生える芝草である。
 三句「かれがれに」の「かれがれ」は、道芝が「枯れ枯れ」になる意と、訪れが「離れ離れ」になる意とを掛ける掛詞である。本巻の第千二百四十四首、第千二百四十五首以来繰り返された「枯れ」と「離れ」の掛詞を、巻末で重ねている。
 四句「跡なき霜の」は、踏んだ足跡もない霜の、の意である。本巻の第千二百八十六首の「跡絶えて」、第千二百八十九首の「跡もなし」と同じく、訪れの跡が消えたことを示す。
 結句「結ぼほれつつ」は、霜が結ぶ意と、心が晴れずにふさぎこむ意とを重ね、「つつ」で言いさして余情を残す。巻頭の第千二百三十四首が、宵ごとに思いを秘めて泣く恋の始まりを詠んだのに対し、巻末のこの歌は、訪れの跡も霜に閉ざされた恋の終わりを詠み、巻第十四を結んでいる。

みちしば:道端に生える芝草
かれがれ:枯れ枯れの意と、離れ離れの意を掛ける
むすぼほる:霜などが結ぶ、心が晴れずふさぎこむ
作者
俊成卿女
出典
新古今和歌集
前の歌
ふりにけり時雨は袖に秋かけて 言ひしばかりを待つとせしまに
次の歌
白妙の袖の別れに露落ちて 身にしむ色の秋風ぞ吹く