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白妙の袖の別れに露落ちて
身にしむ色の秋風ぞ吹く

歌の意味
共寝した白い袖を分かって別れる朝、涙の露がこぼれ落ち、身にしみとおる色をした秋風が吹いている。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1336

詞書「水無瀬恋十五首歌合に」
 露を詠む一連の一首目で、巻第十五の巻頭歌である。共寝の袖を分かって別れる朝に涙の露が落ち、身にしみる色の秋風が吹くさまを詠む。詞書によれば、水無瀬恋十五首歌合に出詠された歌である。
 作者の「藤原定家朝臣」は、藤原俊成の子の定家である。『新古今和歌集』の撰者の一人で、のちに『新勅撰和歌集』を単独で撰んだ。
 水無瀬恋十五首歌合は、建仁二年(1202)九月に後鳥羽院が水無瀬離宮で催した歌合で、恋の歌十五題を競わせたものである。
 四句と結句は、『古今和歌六帖』の「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな」を踏まえる。色のないものとされてきた秋風に、この歌は色を認めている。

 初句「白妙の」は「袖」にかかる枕詞である。白い色がまず示され、四句の「色」と響き合う。
 二句「袖の別れに」は、共寝して重ねた袖を分かって別れること、すなわち後朝の別れをいう。
 三句「露落ちて」の「露」は涙のたとえである。この歌から、露を詠む一連が始まる。
 四句「身にしむ色の」は、身にしみとおる色の、の意である。本来色のないものとされる秋風に、あえて色を認めている。別れの悲しみが、風にまで色を感じさせるのである。
 結句「秋風ぞ吹く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「吹く」で結ぶ係り結びである。秋は恋の衰えを思わせる季節として置かれ、恋の終わりを主題とする巻第十五が秋の景物から始まることを示す。

しろたへ:白い布。転じて白い色
きぬぎぬ:共寝した男女が翌朝それぞれの衣を着て別れること。後朝と書く
作者
藤原定家
出典
新古今和歌集
前の歌
通ひ来し宿の道芝かれがれに 跡なき霜の結ぼほれつつ
次の歌
思ひ入る身はふかくさの秋の露 頼めし末や木枯らしの風