問へかしな尾花がもとの思ひ草
しをるる野辺の露はいかにと
- 歌の意味
-
尋ねてほしいものだ。尾花の根もとの思い草がしおれている野辺の、その露はどうしているかと。
- 鑑賞
-
巻第十五 恋歌五 1340
詞書は前の歌に続き「題しらず」
露を詠む一連の五首目である。尾花のもとの思い草がしおれる野辺の露はどうしているかと、せめて尋ねてほしいと願う。思い草に物思いに沈むわが身を重ねている。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「右衛門督通具」は源通具である。内大臣源通親の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。
本歌は『万葉集』巻十に見える「道の辺の尾花が下の思ひ草」の歌で、尾花の下に生える思い草に物思いを寄せている。
初句「問へかしな」は、尋ねてほしいものだ、の意である。「かし」「な」は念を押して願いを強める。初句で切れる。
二句「尾花がもとの」は、ススキの穂の根もとの、の意である。本歌の「尾花が下の」を取る。
三句「思ひ草」は本歌と同じ語である。「思ひ」の語を含み、物思いに沈むわが身が重ねられる。
四句「しをるる野辺の」は、前歌の「野辺の露」を受け、露に濡れてしおれる野辺をいう。涙に濡れてしおれる袖をも思わせる。
結句「露はいかにと」で、初句の「問へかしな」へ返る倒置となっている。前歌が誰もあわれと見まいと嘆いたのに対し、この歌はせめて問うてほしいと相手に呼びかけ、同じ嘆きを願いの形で差し出している。
をばな:ススキの穂
おもひぐさ:ススキなどの根もとに寄生して咲く草で、ナンバンギセルのこととされる
しをる:しおれる
- 作者
-
源通具
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
恋ひわびて野辺の露とは消えぬとも 誰か草葉をあはれとは見ん
- 次の歌
-
夜の間にも消ゆべきものを露霜の いかに忍べと頼めおくらん