あだなりと思ひしかども君よりは
もの忘れせぬ袖の上露
- 歌の意味
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はかないものだと思っていたけれども、あなたよりはよほど物忘れをしない、袖の上に置く露であることだ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1342
詞書「題しらず」
露を詠む一連の七首目である。はかないと思っていた袖の露が、あなたよりも物忘れをしないと詠み、訪れを忘れた相手を恨む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「道信朝臣」は藤原道信である。太政大臣藤原為光の子で、左近衛中将に至ったが、二十三歳の若さで没した。
初句「あだなりと」は、はかない、あてにならない、の意である。露はすぐに消えるものだという通念を示す。
二句「思ひしかども」の「しか」は過去の助動詞「き」の已然形で、そう思っていたけれども、と通念を覆す。
三句「君よりは」で、露と相手が比べられる。はかないはずの露よりも、相手の方がもっと忘れやすいという理屈である。
四句「もの忘れせぬ」は、毎夜欠かさず袖に置く涙の露を、物を忘れないものと見立てた表現である。
結句「袖の上露」は体言止めである。前歌が露霜のはかなさを嘆いたのに対し、この歌は露ははかないという通念そのものを逆手に取り、相手の心のはかなさを責めている。
あだ:はかないこと、誠実でないこと
うはつゆ:物の表面に置く露
- 作者
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藤原道信
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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夜の間にも消ゆべきものを露霜の いかに忍べと頼めおくらん
- 次の歌
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同じくはわが身も露と消えななん 消えなばつらき言の葉も見じ