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身に近く来にけるものを色かはる
あきをばよそに思ひしかども

歌の意味
わが身のすぐそばまで来ていたのだった。色の変わる秋、人の心の飽きというものを、よそごとと思っていたけれども。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1352

詞書「思ふこと侍りける秋の夕暮、ひとりながめてよみ侍りける」
 秋の色の移ろいを詠む一連の二首目である。色の変わる秋、すなわち人の心の飽きを他人事と思っていたが、それがわが身に近く来ていたと気づく。詞書によれば、思い悩むことのあった秋の夕暮に、ひとり物思いにふけって詠んだ歌である。
 作者の「六条右大臣室」は、六条右大臣と呼ばれた源顕房の妻である。「室」は貴人の妻をいう語である。

 初句「身に近く」は、わが身のすぐそばに、の意である。
 二句「来にけるものを」の「にける」は、完了の「ぬ」に気づきの「けり」が付いた形で、来ていたのだった、という驚きを表す。「ものを」は詠嘆である。二句で切れる。
 三句「色かはる」は、草木の色が変わる意と、人の心が変わる意を重ねる。前歌の紅葉を受けた語である。
 四句「あきをばよそに」の「あき」は、季節の「秋」と、心が離れる「飽き」を掛ける掛詞である。二句からの倒置で、何が近く来ていたのかをここで示す。
 結句「思ひしかども」は、本巻の第千三百四十二首の二句と同じ語で、そう思っていたけれども、と通念を覆す形である。前歌が遠い安達の原の紅葉を思いやったのに対し、この歌では秋がわが身の近くに来ており、遠近の対比となっている。

あき:季節の「秋」と、心が離れる「飽き」を掛ける
作者
六条右大臣室
出典
新古今和歌集
前の歌
思ひやるよその村雲しぐれつつ 安達の原に紅葉しぬらん
次の歌
色かはる萩の下葉を見てもまづ 人の心のあきぞ知らるる