稲妻は照らさぬ宵もなかりけり
いづらほのかに見えしかげろふ
- 歌の意味
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稲妻は照らさない宵とてないのだった。それなのにどこへ行ったのか、ほのかに見えたあのかげろうは。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1354
詞書は前の歌に続き「題しらず」
夜の空の景物に寄せる一連の一首目である。稲妻でさえ照らさない宵はないのに、ほのかに見えたかげろうのようなあの人はどこへ行ったのかと嘆く。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は本文に記されていないが、他本では「読人しらず」とされ、これに従う。前歌の作者の相模の歌ではない。
初句「稲妻は」は、秋の夜空に光る稲光をいう。稲妻は稲を実らせるものとされ、秋の景物として詠まれてきた。
二句「照らさぬ宵も」は、照らさない宵も、の意である。
三句「なかりけり」は、気づきの「けり」で、ないのだった、と詠嘆する。三句で切れる。稲妻でさえ毎夜欠かさず現れることを確かめる。
四句「いづらほのかに」の「いづら」は、どこか、どこへ行ったのか、と行方を問う語である。
結句「見えしかげろふ」は体言止めである。かげろうは、ほのかに見えてすぐ消えるものとして、一度だけ姿を見せた相手をたとえる。毎夜現れる稲妻と、一度きりで消えたかげろうとが対比されている。
いなづま:稲光
かげろふ:陽炎、または蜻蛉のことで、ほのかに見えてはかなく消えるもののたとえ
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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色かはる萩の下葉を見てもまづ 人の心のあきぞ知らるる
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人知れぬ寝覚めの涙降り満ちて さもしぐれつる夜半の空かな