人知れぬ寝覚めの涙降り満ちて
さもしぐれつる夜半の空かな
- 歌の意味
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人知れず寝覚めに流す涙が降り満ちて、それでこんなにも時雨れていたのだな、夜半の空は。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1355
詞書は前の歌に続き「題しらず」
夜の空の景物に寄せる一連の二首目である。夜半の空の時雨は、人知れず寝覚めに流した自分の涙が降り満ちたためであったと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「謙徳公」は藤原伊尹である。右大臣藤原師輔の長男で、摂政太政大臣に至った。謙徳公は没後に贈られた諡である。
初句「人知れぬ」は、人に知られない、の意で、忍ぶ恋であることを示す。
二句「寝覚めの涙」は、夜中にふと目覚めて流す涙をいう。
三句「降り満ちて」は、涙が雨のように降り満ちて、の意である。涙を雨に見立て、空へと広げる大きな誇張である。
四句「さもしぐれつる」の「さも」は、そのように、の意である。時雨の降る理由を、自分の涙に求めている。
結句「夜半の空かな」は、詠嘆の「かな」で結ぶ。前歌が夜空の稲妻を詠んだのを受け、同じ夜の空に時雨を置く。本巻の第千三百五十一首の「しぐれつつ」の語も響いている。
ねざめ:夜中に目を覚ますこと
しぐる:時雨が降る
よは:夜中
- 作者
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藤原伊尹
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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稲妻は照らさぬ宵もなかりけり いづらほのかに見えしかげろふ
- 次の歌
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涙のみ浮き出づる海人の釣竿の 長き夜すがら恋ひつつぞ寝る