寝る夢にうつつの憂さも忘られて
思ひなぐさむほどぞはかなき
- 歌の意味
-
寝て見る夢の中では、現実のつらさも忘れられて心が慰められる。けれどもそのひとときは、なんとはかないことか。
- 鑑賞
-
巻第十五 恋歌五 1384
詞書は前の歌に続き「題しらず」
夢を詠む一連の五首目である。夢の中では現実のつらさを忘れて心が慰められるが、そのひとときはあまりにはかないと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「女御徽子女王」は、醍醐天皇の皇子重明親王の娘の徽子である。斎宮を務めたのち村上天皇の女御となり、斎宮女御と呼ばれた。
初句「寝る夢に」は、寝て見る夢の中で、の意である。
二句「うつつの憂さも」の「うつつ」は、現実、目覚めている時をいう。夢と現実が対比される。
三句「忘られて」の「られ」は自発で、自然と忘れられて、の意である。
四句「思ひなぐさむ」は、心が慰められる、の意である。
結句「ほどぞはかなき」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「はかなき」で結ぶ係り結びである。前歌が夢を頼みにしようとしたのに対し、この歌は夢の慰めがはかないものであることを見据えており、夢への期待と醒めた認識とが並べられている。
うつつ:現実、目覚めている状態
なぐさむ:心が晴れる、慰められる
- 作者
-
徽子女王
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
春の夜の夢のしるしはつらくとも 見しばかりだにあらば頼まん
- 次の歌
-
かくばかり寝で明かしつる春の夜に いかに見えつる夢にかあるらん