床近しあなかま夜半のきりぎりす
夢にも人の見えもこそすれ
- 歌の意味
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寝床が近いのだ。しっ、静かにしておくれ、夜半のこおろぎよ。夢にでもあの人が見えるかもしれないのだから。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1388
詞書「題しらず」
夢を詠む一連の九首目である。寝床近くで鳴くこおろぎに、夢にでも恋しい人が見えるかもしれないから静かにしてくれと呼びかける。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「基俊」は、右大臣藤原俊家の子で、藤原氏の歌人である。官位には恵まれなかったが、歌合の判者を多く務め、藤原俊成の師となった。
初句「床近し」は、寝床が近い、の意で、初句で切れる。こおろぎが寝床のすぐそばで鳴いていることをいう。
二句「あなかま夜半の」の「あなかま」は、しっ、静かに、と人を制する語である。
三句「きりぎりす」は、今のこおろぎをいう。秋の夜に鳴く虫で、独り寝の寂しさを誘うものとして詠まれてきた。
四句「夢にも人の」は、夢にでもあの人が、の意である。前歌までの夢の一連を受けている。
結句「見えもこそすれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「すれ」で結ぶ係り結びである。「もこそ」は、~するかもしれないから、という気がかりを表し、夢に人が見えるかもしれないのに目を覚まさせられては困る、という気持ちを込める。前歌が夢から覚めた後を詠んだのに対し、この歌は夢を見る前の寝入りばなを詠んでいる。
あなかま:しっ、静かに、と人を制する語
きりぎりす:今のこおろぎ
- 作者
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藤原基俊
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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逢ふと見てことぞともなく明けぬなり はかなの夢の忘れ形見や
- 次の歌
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あはれなりうたた寝にのみ見し夢の 長き思ひにむすぼほれなん