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君しまれ道の行き来を定むらん
過ぎにし人をかつ忘れつつ

歌の意味
よりによってあなたが、道の行き来を定める役を務めるというのか。過ぎ去った人のことは片端から忘れながら。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1397

詞書「昔見ける人、賀茂祭の次第使に出で立ちてなんまかり渡るといひて侍りければ」
 途絶えた仲を詠む一連の三首目である。昔の恋人が賀茂祭の行列を取り仕切る役に出ると聞き、過ぎた人を忘れながら道の行き来を定めるのかと皮肉をこめる。詞書によれば、かつて通じていた人が、賀茂祭の次第使として出立して前を通ると言ってきたので詠んだ歌である。原文に作者名はなく、前歌に続く馬内侍の歌として配列されている。
 作者の「馬内侍」は、左馬権頭源時明の娘である。斎宮女御徽子女王、選子内親王、東三条院詮子などに仕え、一条天皇の中宮定子の立后に際して掌侍となった。
 賀茂祭は、四月の中の酉の日に行われる上賀茂神社と下鴨神社の祭で、葵祭とも呼ばれる。次第使は、祭の行列の次第を取り仕切る使いである。

 初句「君しまれ」は、「君しもあれ」の約まった形で、よりによってあなたが、の意である。
 二句「道の行き来を」は、祭の行列が通る道の行き来を、の意である。
 三句「定むらん」は、定めるというのだろうか、の意である。次第使の役目を言い、三句で切れる。
 四句「過ぎにし人を」は、過ぎ去った人、すなわち昔の恋人である自分を、の意である。行列が道を「過ぎ」ることと響き合う。
 結句「かつ忘れつつ」は、一方では忘れながら、の意である。三句からの倒置で、道の行き来は定めても、人の行き来は忘れているという皮肉を後から示している。前歌が忘れたかと問われて答えたのに対し、この歌は忘れているのは相手の方だと言い返している。

しだいし:祭の行列の次第を取り仕切る使い
かつ:一方では
作者
馬内侍
出典
新古今和歌集
前の歌
つらからば恋しきことは忘れなで 添へてはなどか静心なき
次の歌
花咲かぬ朽木の杣の杣人の いかなるくれに思ひ出づらん