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わが身こそあらぬかとのみたどらるれ
問ふべき人に忘られしより

歌の意味
わが身こそ、以前の自分ではない別人なのではないかとばかり、迷い疑われる。訪ねてくれるはずの人に忘れられてからというもの。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1405

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 身の憂さを嘆く一連の五首目である。訪ねてくるはずの人に忘れられてから、わが身が以前の自分ではないかのように思われると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「小野小町」は、平安時代前期の女性歌人で、六歌仙、三十六歌仙の一人である。

 初句「わが身こそ」は、わが身こそ、の意で、係助詞「こそ」が三句に係る。
 二句「あらぬかとのみ」は、以前の自分ではない別の身ではないかとばかり、の意である。
 三句「たどらるれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「るれ」で結ぶ係り結びで、迷い疑われる、の意である。「るれ」は自発を表す。三句で切れる。
 四句「問ふべき人に」は、訪ねてくれるはずの人に、の意である。
 結句「忘られしより」は、忘れられてから、の意である。三句からの倒置で、わが身を疑う理由を後に示している。前歌が形見を見て人を偲ぼうとしたのに対し、この歌は忘れられた自分自身を見失っている。

たどる:迷いながら考える、あれこれと疑う
作者
小野小町
出典
新古今和歌集
前の歌
逢ふことのかたみをだにも見てしがな 人は絶ゆとも見つつ偲ばん
次の歌
葛城や久米路に渡す岩橋の 絶えにしなかとなりや果てなん