梅の花香をのみ袖にとどめおきて
わが思ふ人は訪れもせぬ
- 歌の意味
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梅の花は香りだけを私の袖にとどめておいて散ってゆき、私の恋しく思う人は、訪れさえしない。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1410
詞書は前の歌に続き「題しらず」
絶えた契りを詠む一連の五首目である。梅の花は香りだけでも袖に残してくれるのに、恋しい人は訪れさえしないと嘆く。原文に作者名はなく、前歌に続く業平の歌として配列されている。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「業平朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の子で、六歌仙、三十六歌仙の一人である。
初句「梅の花」は、香りの高い花として詠まれる春の景物である。
二句「香をのみ袖に」は、香りだけを袖に、の意である。梅は去っても香りを残すことをいう。
三句「とどめおきて」は、とどめ残しておいて、の意である。
四句「わが思ふ人は」は、私の恋しく思う人は、の意で、梅の花と対比される。
結句「訪れもせぬ」は、訪れることさえしない、の意である。香りという形見を残す梅と、何も残さず訪れもしない人とが対比されている。前歌が変わらない跡を詠んだのに続き、この歌は袖に残る梅の香を詠み、残るものと残らないものとを並べている。
おとづる:訪れる、便りをする
- 作者
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在原業平
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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出でていにし跡だにいまだ変はらぬに 誰が通ひ路と今はなるらん
- 次の歌
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天の原そこともしらぬ大空に おぼつかなさを嘆きつるかな