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思ひやる心も空に白雲の
出で立つかたを知らせやはせぬ

歌の意味
あなたを思いやる私の心もうわの空になっているのに、白雲が立ちのぼるように旅立ってゆく行き先を、どうして知らせてくれないのか。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1414

詞書「女の外へまかるを聞きて」
 空と雲を詠む一連の四首目である。女がよそへ移ると聞き、思いやる心もうわの空であるのに、白雲のように出で立つ行き先を知らせてはくれないのかと詠む。詞書によれば、女がほかの所へ移ると聞いて贈った歌である。
 作者の「兵部卿致平親王」は、村上天皇の皇子である。兵部卿を務めたのち出家した。

 初句「思ひやる」は、遠く思いを馳せる、の意である。
 二句「心も空に」の「空に」は、心が落ち着かずうわの空である意で、大空の意を響かせて三句の「白雲」を導く。前歌の「はるけき空」を受けている。
 三句「白雲の」は、白雲が湧き立つように、の意で、四句の「出で立つ」を導く。「白」の音は結句の「知らせ」とも響き合う。
 四句「出で立つかたを」は、旅立ってゆく方角を、の意である。雲が立つことと人が出で立つことが重ねられている。
 結句「知らせやはせぬ」の「やは」は反語で、知らせてくれないのか、知らせてほしい、の意である。連体形「ぬ」で結ぶ。

いでたつ:出発する、旅立つ
作者
致平親王
出典
新古今和歌集
前の歌
逢はずしてふるころほひのあまたあれば はるけき空にながめをぞする
次の歌
雲居より遠山鳥の鳴きてゆく 声ほのかなる恋もするかな