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雲居より遠山鳥の鳴きてゆく
声ほのかなる恋もするかな

歌の意味
空の高みを遠い山の山鳥が鳴きながら飛んでゆく、その声のように、ほのかな恋をもすることだ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1415

詞書「題しらず」
 空と雲を詠む一連の五首目である。空の高みを遠山鳥が鳴いてゆく声のように、ほのかにしか届かない恋をすると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「躬恒」は、平安時代前期の歌人で、凡河内氏の人である。紀貫之らとともに『古今和歌集』を撰進した。

 初句「雲居より」は、空の高みを、の意である。前歌の「白雲」を受け、雲の景物が続く。
 二句「遠山鳥の」は、遠い山にすむ山鳥の、の意である。本巻の第千三百七十一首の「遠山鳥」と同じ語で、離れて寝る山鳥の言い伝えを思わせる。
 三句「鳴きてゆく」は、鳴きながら飛んでゆく、の意である。初句から三句までが、「ほのか」を導く序詞となる。
 四句「声ほのかなる」は、声がかすかに聞こえる、の意である。遠い鳥の声のかすかさが、恋のかすかさへと移される。
 結句「恋もするかな」は、詠嘆の「かな」で結ぶ。相手の気配をほのかにしか感じられない恋を、遠く空を行く鳥の声にたとえている。

くもゐ:空の高いところ
作者
凡河内躬恒
出典
新古今和歌集
前の歌
思ひやる心も空に白雲の 出で立つかたを知らせやはせぬ
次の歌
雲居なる雁だに鳴きて来る秋に などかは人の訪れもせぬ