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雲居なる雁だに鳴きて来る秋に
などかは人の訪れもせぬ

歌の意味
空の高みを飛ぶ雁でさえ鳴いてやって来る秋であるのに、どうしてあの人は訪れもしないのか。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1416

詞書「弁更衣久しく参らざりけるに、たまはせける」
 空と雲を詠む一連の六首目である。空を行く雁でさえ鳴いて来る秋に、なぜ訪れもしないのかと、久しく参らない更衣を責める。詞書によれば、弁更衣が久しく参上しなかったので、天皇がお与えになった歌である。
 作者の「延喜御歌」は、醍醐天皇の御製である。宇多天皇の皇子で、第六十代の天皇として即位し、その治世は延喜の治と称えられた。『古今和歌集』の撰進を命じた天皇である。
 弁更衣は醍醐天皇の更衣で、弁と呼ばれた女性である。更衣は女御に次ぐ天皇の妃の位である。

 初句「雲居なる」は、空の高みにある、の意である。前歌の初句「雲居より」と同じ語で始まり、二首が並べられている。
 二句「雁だに鳴きて」の「だに」は、~でさえ、の意である。雁は遠くから便りを運ぶものとされてきた。
 三句「来る秋に」は、やって来る秋であるのに、の意である。三句で切れる。
 四句「などかは人の」の「などかは」は、どうして~か、と強く問う語である。
 結句「訪れもせぬ」は、「などかは」を受けて連体形で結び、訪れもしない、の意である。遠くから鳴いて来る雁と、近くにいながら来ない人とが対比されている。前歌が遠くの鳥の声のかすかさを詠んだのに対し、この歌は鳥が来るのに人は来ないと言い、同じ空の鳥を用いて問いかけている。

かり:雁。秋に北から渡って来る鳥で、便りを運ぶものとされた
作者
醍醐天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
雲居より遠山鳥の鳴きてゆく 声ほのかなる恋もするかな
次の歌
春ゆきて秋までとやは思ひけん かりにはあらず契りしものを