春ゆきて秋までとやは思ひけん
かりにはあらず契りしものを
- 歌の意味
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春に行って秋まで帰らないとは、思いもしなかった。雁のようにかりそめの仲ではないと、約束したのに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1417
詞書「斎宮女御、春ころまかり出でて、久しう参り侍らざりければ」
空と雲を詠む一連の七首目である。春に里へ下がって秋まで戻らないとは思わなかった、かりそめではないと約束したのにと、斎宮女御を責める。詞書によれば、斎宮女御が春ごろ宮中から退出して、久しく参上しなかったので詠んだ歌である。
作者の「天暦御歌」は、村上天皇の御製である。醍醐天皇の皇子で、第六十二代の天皇として即位し、その治世は天暦の治と称えられた。天暦はその治世の年号である。
初句「春ゆきて」は、春に去って行って、の意である。雁が春に北へ帰ることと、女御が春に里へ下がったことが重ねられる。
二句「秋までとやは」の「やは」は反語で、秋までとは思っただろうか、思いもしなかった、の意である。雁は秋に戻って来るが、女御は秋になっても戻らない。
三句「思ひけん」は、係助詞「やは」を受けて連体形「けん」で結ぶ係り結びである。三句で切れる。
四句「かりにはあらず」の「かり」は、鳥の「雁」と、かりそめの「仮」を掛ける掛詞である。前歌の「雁」を受けている。
結句「契りしものを」は、約束したのに、の意で、「ものを」は逆接の詠嘆である。前歌の醍醐天皇が雁を引いて更衣を責めたのに続き、その皇子の村上天皇も雁を引いて女御を責めており、二代の天皇の歌が同じ趣向で並べられている。
かり:鳥の「雁」と、かりそめの「仮」を掛ける
- 作者
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村上天皇
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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雲居なる雁だに鳴きて来る秋に などかは人の訪れもせぬ
- 次の歌
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初雁のはつかに聞きしことづても 雲路に絶えてわぶる頃かな