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水の上のはかなき数も思ほえず
深き心し底にとまれば

歌の意味
水の上に数を書くようなはかないことも、思いはしない。深い心が、水の底にとどまるように、心の底にとどまっているので。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1421

詞書「斎宮女御参り侍りけるに、いかなる事かありけん」
 忘れがたい思いを詠む一連の三首目である。水の上に数を書くようなはかない思いはしない、深い心が底にとどまっているのだからと、女御への変わらない心を詠む。詞書によれば、斎宮女御が参上した折に、何かあったのであろうか、その時に詠んだ歌である。
 作者の「天暦御歌」は、村上天皇の御製である。醍醐天皇の皇子で、第六十二代の天皇として即位し、その治世は天暦の治と称えられた。天暦はその治世の年号である。
 水の上に数を書くことは、『古今和歌集』の「行く水に数書くよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり」以来、はかないことのたとえとされる。なお本文の結句の末尾には「〈朱〉/」という注記があるが、歌の本文ではないため除いた。

 初句「水の上の」は六音の字余りである。水の上に書く数、すなわちすぐに消えるはかないものをいう。
 二句「はかなき数も」は、はかない数も、の意である。
 三句「思ほえず」は、思われない、の意である。三句で切れる。
 四句「深き心し」の「し」は強めである。水の深さと心の深さが重ねられる。
 結句「底にとまれば」は、底にとどまっているので、の意である。三句からの倒置で、はかなく思わない理由を後に示す。「水」「深き」「底」は縁語で、水の上ではかなく消える数と、底に深くとどまる心とが、上下の対比で示されている。

かず:数。ここでは水の上に書く数
作者
村上天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
住吉の恋忘れ草種絶えて なき世に逢へる我ぞ悲しき
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長き世の尽きぬ嘆きの絶えざらば 何に命をかへて忘れん