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世の憂きも人のつらきも忍ぶるに
恋しきにこそ思ひわびぬれ

歌の意味
世の中のつらさも、あの人のつれなさも、耐え忍んでいるのだが、恋しさにだけは思い悩んでしまうことだ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1424

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 命と身のほどを詠む一連の二首目である。世のつらさも人のつれなさも耐え忍べるが、恋しさにだけは思い悩んでしまうと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「藤原元真」は、平安時代中期の歌人で、三十六歌仙の一人である。官位は従五位下にとどまった。

 初句「世の憂きも」は、世の中のつらさも、の意である。前歌の「常ならぬ世」を受けている。
 二句「人のつらきも」は、あの人のつれなさも、の意である。初句と並べて、耐えられるものを挙げていく。
 三句「忍ぶるに」は、耐え忍んでいるのに、の意である。
 四句「恋しきにこそ」は、恋しさにこそ、の意で、係助詞「こそ」が結句に係る。
 結句「思ひわびぬれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「ぬれ」で結ぶ係り結びである。世のつらさや人のつれなさには耐えられても、恋しさだけには耐えられないという理屈で、恋しさの強さを示している。

おもひわぶ:思い悩む
作者
藤原元真
出典
新古今和歌集
前の歌
心にもまかせざりける命もて 頼めもおかじ常ならぬ世を
次の歌
数ならばかからましやは世の中に いと悲しきはしづのをだまき