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年暮れし涙のつららとけにけり
苔の袖にも春や立つらん

歌の意味
年の暮れに流した涙が凍ってできたつららも、とけてしまった。出家の身の苔の衣の袖にも、春は立つのだろうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1436

詞書「入道前関白太政大臣家に百首歌よませ侍りけるに、立春の心を」
 春の訪れを詠む一連の一首目で、巻第十六の巻頭歌である。年の暮れに流した涙が凍ったつららもとけ、出家の身の苔の袖にも春が来たのかと詠む。詞書によれば、入道前関白太政大臣の家で詠ませた百首歌のうち、立春の題で詠まれた歌である。
 作者の「皇太后宮大夫俊成」は藤原俊成である。藤原俊忠の子で、定家の父にあたる。皇太后宮大夫を務め、安元二年(1176)に出家した。『千載和歌集』の撰者である。
 詞書の「入道前関白太政大臣」は九条兼実である。この百首は、兼実が右大臣であった治承二年(1178)に催した右大臣家百首を指す。

 初句「年暮れし」は、年が暮れた、の意である。過去の助動詞「し」によって、過ぎ去った年の暮れを振り返る形をとる。
 二句「涙のつらら」は、流した涙が凍ってつららとなったとする誇張の表現である。年の暮れに老いを嘆いて流した涙を思わせる。
 三句「とけにけり」は、完了の「に」と詠嘆の「けり」を重ね、つららがとけたことに今気づいた感慨を表す。ここで三句切れとなる。
 四句「苔の袖にも」の「苔の袖」は、僧や隠者のまとう粗末な衣の袖で、出家した作者自身の袖である。「も」によって、世の人と同じくこの身にも、という含みが生じる。
 結句「春や立つらん」は、係助詞「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びである。疑問の形で春の到来を推し量り、雑歌の巻を立春の歌から始めている。

こけのころも:苔の衣。僧や隠者のまとう粗末な衣
つらら:氷。ここでは涙が凍ったもの
たつ:季節が始まる。春になる
作者
藤原俊成
出典
新古今和歌集
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さしてゆくかたは湊の浦高み うらみて帰る海人の釣舟
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