山陰やさらでは庭に跡もなし
春ぞ来にける雪のむら消え
- 歌の意味
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山陰の住まいよ。雪がまだらに消えたあとのほかには、庭に訪れる人の跡もない。春が来たのだ、この雪のむら消えに。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1437
詞書「土御門内大臣家に、山家残雪といふ心をよみ侍りけるに」
春の訪れを詠む一連の二首目である。山陰の住まいの庭には人の訪れた跡もなく、雪がまだらに消えていることだけが春の来たしるしであると詠む。詞書によれば、土御門内大臣の家で、山家残雪の題で詠まれた歌である。
作者の「藤原有家朝臣」は、藤原重家の子である。六条藤家の流れをくむ歌人で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。
詞書の「土御門内大臣」は源通親である。後鳥羽院の近臣として重んじられ、内大臣に至った。山家残雪は、山里の住まいに残る雪という題である。
初句「山陰や」の「や」は詠嘆の間投助詞で、山陰の住まいをまず示して初句で切れる。
二句「さらでは庭に」の「さらでは」は、そうでなくては、それ以外には、の意で、結句の雪のむら消えを指している。
三句「跡もなし」は、庭に人の訪れた足跡もないことをいい、山里の住まいの寂しさを表す。ここで三句切れとなる。
四句「春ぞ来にける」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びである。春の到来に気づいた感慨を強く示す。
結句「雪のむら消え」は体言止めである。前歌で涙のつららがとけたのに続き、雪が消えることで春の到来を示し、氷や雪のとけるさまで一連がつながる。
やまかげ:山のかげになった所
むらぎえ:雪などがまだらに消え残ること
- 作者
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藤原有家
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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年暮れし涙のつららとけにけり 苔の袖にも春や立つらん
- 次の歌
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あはれなり昔の人を思ふには 昨日の野辺に御幸せましや