ひきかへて野辺のけしきは見えしかど
昔を恋ふる松はなかりき
- 歌の意味
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小松を引いてみると、以前とはうって変わって野辺のありさまは見えたけれども、昔を恋しがる松はなかった。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1439
詞書「御返し」
春の訪れを詠む一連の四首目で、前歌の源雅信の歌への円融院の返しである。野辺のありさまは在位の頃とうって変わって見えたが、昔を恋う松はなかったと詠み、昔を慕う心はないと答えている。
作者の「円融院御歌」は円融天皇である。村上天皇の皇子で、兄の冷泉天皇の譲位を受けて即位し、のち花山天皇に位を譲った。
初句「ひきかへて」は、うって変わっての意の「引き換へて」に、子の日に小松を引く意を掛ける。子の日の遊びの場にふさわしい言い出しである。
二句「野辺のけしきは」は、譲位ののちに出かけた船岡の野の眺めをいう。前歌の「昨日の野辺」を受けている。
三句「見えしかど」は、過去の助動詞「き」の已然形「しか」に逆接の「ど」を添え、下句へと転じる。
四句「昔を恋ふる」は、前歌の「昔の人を思ふ」を受けた語である。雅信の問いかけに、同じ「昔」の語で答えている。
結句「松はなかりき」の「松」は、子の日に引く小松である。昔を恋う松はなかったと過去の「き」で言い切り、自分にも昔を慕う心はないと切り返す。
ひきかふ:すっかり変わる意の「引き換ふ」に、子の日に小松を引く意を掛ける
けしき:ありさま。様子
- 作者
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円融院
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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あはれなり昔の人を思ふには 昨日の野辺に御幸せましや
- 次の歌
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春来れば袖の氷もとけにけり 漏りくる月の宿るばかりに