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遅く疾くつひに咲きぬる梅の花
誰が植ゑ置きし種にかあるらん

歌の意味
遅い早いの違いはあっても、ついに咲いた梅の花は、いったい誰が植えておいた種なのだろうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1443

詞書「枇杷左大臣の大臣になりて侍りけるよろこび申すとて、梅を折りて」
 鶯と梅を詠む一連の三首目である。遅い早いの違いはあっても、ついに咲いた梅の花は誰が植えておいた種なのかと詠む。詞書によれば、枇杷左大臣が大臣に任じられた慶びの折に、梅の枝を折って詠んだ歌である。
 作者の「貞信公」は藤原忠平である。関白藤原基経の子で、摂政、関白、太政大臣を歴任した。貞信公は没後に贈られた名である。
 詞書の「枇杷左大臣」は藤原仲平である。忠平の兄で、弟に遅れて大臣に昇った。枇杷殿に住んだことからこう呼ばれる。

 初句「遅く疾く」は、遅い早いの差をいう。兄の仲平が弟の忠平より遅れて大臣に昇ったことを、梅の咲く遅速に重ねている。
 二句「つひに咲きぬる」は、完了の助動詞「ぬ」の連体形「ぬる」で、ついに咲いたことを示す。仲平の大臣昇進を梅の開花にたとえている。
 三句「梅の花」は、前歌の三句「梅の花」と同じ句で、梅を詠む歌の連なりを受ける。
 四句「誰が植ゑ置きし」は、梅の木を植えた人を問う形で、兄弟の父である基経を暗に指す。
 結句「種にかあるらん」は、係助詞「か」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びである。遅速の違いはあっても、同じ父から出た兄弟であることを「種」にたとえて、兄の慶びを祝っている。

うゑおく:植えておく
よろこびまうす:任官などの慶びを申し上げる
作者
藤原忠平
出典
新古今和歌集
前の歌
降る雪に色まどはせる梅の花 鶯のみやわきてしのばん
次の歌
百敷に変はらぬものは梅の花 折りてかざせる匂ひなりけり