色香をば思ひも入れず梅の花
常ならぬ世によそへてぞ見る
- 歌の意味
-
色や香には心を寄せることもなく、梅の花を、無常の世になぞらえて見ることだ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1445
詞書「梅の花を見給ひて」
鶯と梅を詠む一連の五首目である。梅の花の色や香には心を寄せず、無常の世になぞらえて見ると詠む。詞書によれば、梅の花を見て詠まれた歌である。
作者の「華山院御歌」は花山天皇である。冷泉天皇の皇子で、在位二年ほどで出家して退位し、以後は法皇として諸国を修行した。
初句「色香をば」は、梅の色と香を示す。前歌が梅の香に変わらないものを見出したのに対し、この歌は色も香も心にかけないとする。
二句「思ひも入れず」は、深く心にとどめることもない、の意である。梅の美しさに執着しない出家の心を表す。
三句「梅の花」は、第千四百四十二首から続けて三句に置かれた「梅の花」である。同じ句を重ねながら、梅を見る心がそれぞれに異なる。
四句「常ならぬ世に」は、無常の世をいう。咲いてはやがて散る梅に、移ろう世のありさまを重ねる。
結句「よそへてぞ見る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「見る」で結ぶ係り結びである。梅の花を無常の世のたとえとして見る、仏道に心を寄せた眼差しを示す。
よそふ:なぞらえる。たとえる
おもひいる:深く心にかける
- 作者
-
花山院
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
百敷に変はらぬものは梅の花 折りてかざせる匂ひなりけり
- 次の歌
-
梅の花何ににほふらん見る人の 色をも香をも忘れぬる世に