折りにこと思ひやすらん花桜
ありし御幸の春を恋ひつつ
- 歌の意味
-
花桜も「折りに来てほしい」と思っているのでしょうか。かつての御幸の春を恋しく思いながら。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1452
詞書「御返し」
桜を詠む一連の二首目で、前歌の円融院の歌への藤原朝光の返しである。花桜もかつての御幸の春を恋しく思いながら、「折りに来てほしい」と思っているだろうと詠み、院の来訪を願っている。
作者の「左大将朝光」は、関白藤原兼通の子である。閑院に住み、左近衛大将、大納言となった。
初句「折りにこと」は、「折りに来よ」と、の意で、花桜の心を言葉にしたものである。前歌の結句「行きて折らばや」を受け、折りに来てくださいと応じている。
二句「思ひやすらん」は、係助詞「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びである。花桜の心を推し量る形をとる。
三句「花桜」は、前歌の「家桜」を受けた語である。ここで三句切れとなる。
四句「ありし御幸の」は、以前にあった御幸をいう。院がかつてこの家を訪れたことを思い起こさせる。
結句「春を恋ひつつ」の「つつ」は継続を表し、花桜が御幸の春を恋い続けていることをいう。倒置の形で理由を後に置き、使いではなく院自身の訪れを願う心を示している。
みゆき:上皇や天皇の外出。御幸、行幸と書く
- 作者
-
藤原朝光
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
垣越しに見るあだ人の家桜 花散りばかり行きて折らばや
- 次の歌
-
万代をふるにかひある宿なれば みゆきと見えて花ぞ散りける