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折る人のそれなるからにあぢきなく
見しわが宿の花の香ぞする

歌の意味
花を折る人がほかならぬあの方であるので、どうにもならず、かつて見た我が宿の花の香がすることだ。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1459

詞書「敦道親王の供に前大納言公任白河の家にまかりて、又の日、親王のつかはしける使につけて申し侍りける」
 桜を詠む一連の九首目である。花を折る人がほかならぬその人であるから、どうにもならず、かつて見た我が宿の花の香がすると詠む。詞書によれば、作者が敦道親王の供をして前大納言公任の白河の家を訪れ、翌日、親王が公任のもとへ遣わした使いに託して贈った歌である。
 作者の「和泉式部」は、大江雅致の娘である。橘道貞の妻となって和泉式部と呼ばれ、のちに為尊親王、敦道親王と恋愛関係を結んだ。上東門院にも仕えた。
 詞書の「敦道親王」は冷泉天皇の皇子である。「前大納言公任」は藤原公任で、関白藤原頼忠の子であり、『和漢朗詠集』を撰んだ。白河は京の東、鴨川の東岸一帯の地である。

 初句「折る人の」は、花を折る人をいう。前日に白河の家の花を折った人を指している。
 二句「それなるからに」の「それ」は、ほかならぬその人、の意で、名を出さずに相手を示している。「からに」は、…であるので、の意である。
 三句「あぢきなく」は、どうにもならない、思うにまかせない、という気持ちを表す。ここで上句の事情と下句の感慨をつなぐ。
 四句「見しわが宿の」は、かつて見た我が家の、の意である。前日に見た白河の家の花を、わが宿の花と親しんで呼んだものとも解される。
 結句「花の香ぞする」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「する」で結ぶ係り結びである。前歌の白河の花見に続き、同じ白河の花が、ここでは香によって思い出されている。

あぢきなし:どうにもならない。思うにまかせない
やど:住まい。家
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
前の歌
いさやまた月日のゆくも知らぬ身は 花の春とも今日こそは見れ
次の歌
見てもまたまたも見まくのほしかりし 花の盛りは過ぎやしぬらん