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見せばやな志賀の唐崎麓なる
長等の山の春のけしきを

歌の意味
見せたいものだ。志賀の唐崎を麓とする、長等の山の春の景色を。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1469

詞書「春頃、大乗院より人につかはしける」
 桜を詠む一連の十九首目である。志賀の唐崎を麓とする長等山の春の景色を、あなたに見せたいと詠む。詞書によれば、春の頃、大乗院から人のもとへ贈った歌である。
 作者の「前大僧正慈円」は、藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、史論書『愚管抄』を著した。
 大乗院は、比叡山にあった慈円の住坊である。志賀の唐崎は近江の歌枕で、琵琶湖の西岸にあり、唐崎の松で知られる。長等山も近江の歌枕で、園城寺の背後の山である。

 初句「見せばやな」の「ばや」は願望の終助詞で、「な」は詠嘆を添える。見せたいものだ、と初句で言い切る。
 二句「志賀の唐崎」は、琵琶湖の西岸の地名である。湖に臨む名所を示す。
 三句「麓なる」は、麓にある、の意で、唐崎を長等山の麓の地として結びつける。
 四句「長等の山の」は、近江の歌枕の長等山である。前の歌々が都や吉野の花を詠んだのに対し、比叡山から望む近江の春へと場所を移す。
 結句「春のけしきを」は、倒置の形で初句の「見せばやな」の目的語を最後に置く。湖と山を合わせた春の眺めの全体を、贈る相手に伝えようとしている。

けしき:ありさま。景色
作者
慈円
出典
新古今和歌集
前の歌
照る月も雲のよそにぞ行きめぐる 花ぞこの世の光なりける
次の歌
柴の戸ににほはん花はさもあらばあれ ながめてけりな恨めしの身や