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桜麻の麻生の浦波立ち返り
見れども飽かず山梨の花

歌の意味
麻生の浦の波が繰り返し寄せるように、何度も立ち返って見ても、見飽きることがない、山梨の花は。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1473

詞書「題しらず」
 晩春の景物を詠む一連の一首目である。麻生の浦の波が寄せ返すように、何度も立ち返って見ても見飽きない山梨の花を詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「俊頼朝臣」は源俊頼である。大納言源経信の子で、白河院の命により『金葉和歌集』を撰んだ。
 麻生の浦は歌枕で、「桜麻の」の枕詞を冠して詠まれる。

 初句「桜麻の」は、「麻生」にかかる枕詞である。桜の語を含み、桜の一連のあとに置かれて春の名残を響かせる。
 二句「麻生の浦波」は、麻生の浦に寄せる波をいう。初句から二句までが、三句の「立ち返り」を導く序詞となる。
 三句「立ち返り」は、波が寄せては返すことと、何度も立ち戻って見ることとを重ねる。序詞から本旨へと転じる要の句である。
 四句「見れども飽かず」は、已然形に逆接の「ども」を添え、見ても見飽きない、の意である。
 結句「山梨の花」は体言止めである。桜の一連のあとに、白い花を咲かせる山梨を置き、晩春の景物へと移っている。

やまなし:山に自生する梨の木。春に白い花を咲かせる
たちかへる:波が寄せては返す。また、何度も立ち戻る
作者
源俊頼
出典
新古今和歌集
前の歌
身はとめつ心は送る山桜 風のたよりに思ひおこせよ
次の歌
白波の越ゆらん末の松山は 花とや見ゆる春の夜の月