おぼつかな霞立つらん武隈の
松のくま漏る春の夜の月
- 歌の意味
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気がかりなことだ。霞が立っているであろう武隈の松の、その木陰から漏れる春の夜の月は、どのように見えるのだろう。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1475
詞書は前の歌に続き「橘為仲朝臣陸奥に侍りける時、歌あまたつかはし」
晩春の景物を詠む一連の三首目である。霞が立っているであろう武隈の松の陰から漏れる春の夜の月を、遠く思いやって詠む。詞書は前の歌に続き、橘為仲が陸奥にいた時に贈った多くの歌の一首である。
作者の「加賀左衛門」は、平安時代中期の女房歌人である。原文には作者名がなく、前歌の作者を受ける。
武隈の松は陸奥の歌枕で、今の宮城県岩沼市にあたり、根元から二本に分かれた松として知られる。
初句「おぼつかな」は、形容詞「おぼつかなし」の語幹で、気がかりだ、はっきりしない、の意を詠嘆的に表す。初句で切れる。
二句「霞立つらん」の「らん」は現在推量で、今ごろ霞が立っているであろう、の意である。遠い陸奥の春を思いやっている。
三句「武隈の」は、陸奥の歌枕の武隈を示す。前歌の末の松山に続き、陸奥の松の名所を詠む。
四句「松のくま漏る」の「くま」は、物陰、奥まった所をいう。三句の「武隈」の「くま」と音を重ね、松の陰から漏れる月光を示す。
結句「春の夜の月」は体言止めで、前歌の結句と同じ句である。末の松山から武隈の松へと陸奥の歌枕を重ね、同じ結句で二首を一組にしている。
くま:物陰。奥まって隠れた所
おぼつかなし:気がかりだ。はっきりしない
- 作者
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加賀左衛門
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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白波の越ゆらん末の松山は 花とや見ゆる春の夜の月
- 次の歌
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世をいとふ吉野の奥の呼子鳥 深き心のほどや知るらん