古典和歌stream

春の雨のあまねき御代を頼むかな
霜に枯れゆく草葉もらすな

歌の意味
春の雨が万物にあまねく降り注ぐように、恵みのゆきわたる御代を頼みに思うことだ。霜に枯れてゆく草葉のような私をも、その恵みから漏らさないでほしい。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1478

詞書「千五百番歌合に」
 晩春の景物を詠む一連の六首目である。春の雨のように恵みのゆきわたる御代を頼みとし、霜に枯れてゆく草葉のような身をも漏らさないでほしいと詠む。詞書によれば、千五百番歌合に出詠された歌である。
 作者の「有家朝臣」は、藤原重家の子である。六条藤家の流れをくむ歌人で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 千五百番歌合は、建仁元年(1201)に後鳥羽院が三十人の歌人に百首歌を詠ませ、それを番えて成った、史上最大の歌合である。

 初句「春の雨の」は、字余りの句で、万物をうるおす春雨を示す。春雨は、君の恵みのたとえとして詠まれる。
 二句「あまねき御代を」の「あまねき」は、すみずみまでゆきわたる、の意である。春雨が等しく降り注ぐさまに、御代の恵みの広さを重ねる。
 三句「頼むかな」は、詠嘆の「かな」で、頼みに思うことだ、と三句で言い切る。
 四句「霜に枯れゆく」は、霜に打たれて枯れてゆくことをいう。不遇のうちに老いてゆく身を草葉にたとえている。
 結句「草葉もらすな」は、「な」の禁止で、漏らさないでくれ、の意となる。「もらす」は雨の縁語で、恵みの雨から取り残さないでほしいと願う述懐である。

あまねし:すみずみまでゆきわたっている
もらす:取り残す。こぼす
作者
藤原有家
出典
新古今和歌集
前の歌
折にあへばこれもさすがにあはれなり 小田の蛙の夕暮の声
次の歌
すべらぎの木高き陰に隠れても なほ春雨に濡れんとぞ思ふ