ここのへにあらで八重咲く山吹の
言はぬ色をば知る人もなし
- 歌の意味
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九重の宮中ではなく、八重に咲いている山吹の、口に出して言わない色、心の内を知る人もいない。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1481
詞書「御返し」
晩春の景物を詠む一連の九首目で、前歌の藤原実方の歌への円融院の返しである。宮中ではなく八重に咲く山吹の、言わない色、心の内を知る人もないと詠む。
作者の「円融院御歌」は円融天皇である。村上天皇の皇子で、兄の冷泉天皇の譲位を受けて即位し、のち花山天皇に位を譲った。
山吹の色を「言はぬ色」とするのは、山吹色を梔子色ともいい、「くちなし」に口無しを重ねたことによる。『古今和歌集』の素性法師の歌「山吹の花色衣主や誰問へど答へずくちなしにして」にも見える発想である。
初句「ここのへに」は、前歌の四句「ここのへ」を受け、宮中と九重の両義を保つ。
二句「あらで八重咲く」は、九重ではなくて八重に咲く、の意である。前歌の「八重」と「九重」の対を、院の側から言い返している。
三句「山吹の」は、前歌の三句「山吹の」と同じ句である。
四句「言はぬ色をば」は、口に出さない色、の意で、山吹色を口無しの色とする発想による。譲位した院の、口に出さない心の内を重ねる。
結句「知る人もなし」は、その心を知る人もいないと言い切る。実方の問いかけに対し、答えないことで答える形になっている。
ここのへ:九つ重なる意と、宮中を指す「九重」を掛ける
くちなし:梔子。その実で染めた色は山吹色に近く、口無しに通わせて詠まれる
- 作者
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円融院
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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八重ながら色も変はらぬ山吹の などここのへに咲かずなりにし
- 次の歌
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おのが波に同じ末葉ぞしをれぬる 藤咲く多祜のうらめしの身や