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唐衣たちかはりぬる春の世に
いかでか花の色を見るべき

歌の意味
衣を裁ち替えるように、すっかり立ち替わってしまった春の世に、どうして花の色を見ることができましょうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1484

詞書「御返し」
 夏を詠む一連の二首目で、前歌の藤原道長の歌への上東門院の返しである。父が出家して立ち替わってしまった世に、どうして花やかな色を見ることができようかと詠み、父の出家を悲しむ心を伝える。
 作者の「上東門院」は藤原彰子である。藤原道長の娘で、一条天皇の中宮となり、後一条天皇と後朱雀天皇を生んだ。

 初句「唐衣」は、前歌の初句「唐衣」をそのまま受けた語である。衣の縁で、次の「たち」を導く。
 二句「たちかはりぬる」の「たちかはり」は、衣を「裁ち替へる」意と、世が「立ち替はる」意を掛ける。前歌の「たち」の掛詞を受け継いでいる。
 三句「春の世に」は、父が出家して移り変わってしまった世をいう。前歌の「春の色」を受ける。
 四句「いかでか花の」は、反語の「いかでか」で、どうして、の意となる。前歌の二句「花の袂に」を受け、花の色を問い返す。
 結句「色を見るべき」は、係助詞「か」を受けて連体形「べき」で結ぶ。父が色を断った世に、自分だけが花やかな色を見ることはできないとし、衣更えの装束に託された親心に、悲しみをもって答えている。

たちかはる:衣を裁ち替える意と、世が立ち替わる意を掛ける
作者
藤原彰子
出典
新古今和歌集
前の歌
唐衣花の袂に脱ぎかへよ 我こそ春の色はたちつれ
次の歌
神代にはありもやしけん桜花 今日のかざしに折れるためしは