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神代にはありもやしけん桜花
今日のかざしに折れるためしは

歌の意味
神代にはこのようなことがあったのだろうか。桜の花を、今日の祭の挿頭に折ったという例は。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1485

詞書「四月祭の日まで花散り残りて侍りける年、その花を使の少将のかざしに賜ふ葉に書きつけ侍りける」
 夏を詠む一連の三首目である。桜の花を今日の祭の挿頭に折ったという例は、神代にはあったのだろうかと詠む。詞書によれば、四月の祭の日まで桜が散り残っていた年に、その花を祭の使の少将の挿頭として賜る折、葉に書きつけた歌である。
 作者の「紫式部」は、藤原為時の娘である。藤原宣孝の妻となり、のちに上東門院に仕えた。『源氏物語』の作者である。
 四月祭は賀茂祭のことで、四月の中の酉の日に行われた賀茂社の祭である。朝廷からの勅使として近衛の少将などが遣わされ、葵を挿頭として飾った。

 初句「神代には」は、神々の世をいう。賀茂の神の祭にちなみ、神代を持ち出している。
 二句「ありもやしけん」は、係助詞「や」を受けて連体形「けん」で結ぶ係り結びで、あったのだろうか、の意となる。ここで二句切れとなる。
 三句「桜花」は、夏の祭の日まで散り残った桜を示す。
 四句「今日のかざしに」の「かざし」は、祭の使が冠に挿す花や葉をいう。ふつうは葵を用いる挿頭に、散り残った桜を添える珍しさを示す。
 結句「折れるためしは」は倒置で、二句の問いの対象を最後に置く。前歌までの衣更えに続き、四月の祭の日に晩春の桜が残るという、季節の重なりを詠んでいる。

かざし:髪や冠に挿す花や枝
ためし:先例。例
まつりのつかひ:祭に朝廷から遣わされる勅使
作者
紫式部
出典
新古今和歌集
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唐衣たちかはりぬる春の世に いかでか花の色を見るべき
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