古典和歌stream

ほととぎすそのかみ山の旅枕
ほのかたらひし空ぞ忘れぬ

歌の意味
ほととぎすよ。その昔、賀茂の神山で旅寝をした夜、ほのかに鳴き交わしたあの空を、今も忘れない。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1486

詞書「斎のむかしを思ひ出でて」
 夏を詠む一連の四首目である。その昔、神山で旅寝をした夜にほのかに鳴き交わしたほととぎすの空を、今も忘れないと詠む。詞書によれば、賀茂の斎院であった昔を思い出して詠んだ歌である。
 作者の「式子内親王」は、後白河天皇の皇女である。若くして賀茂の斎院となり、退いたのちに出家した。
 斎院は、賀茂社に奉仕した未婚の皇女で、賀茂祭の折には上賀茂の神館に宿った。神山は、上賀茂神社の北にある山で、賀茂の神が降り立った地とされる。

 初句「ほととぎす」は、夏を告げる鳥で、ここでは呼びかけである。前歌の賀茂祭に続き、祭の頃に鳴くほととぎすを置く。
 二句「そのかみ山の」の「そのかみ」は、その昔の意の「其の上」と、「神山」を掛ける。斎院であった昔と、祭の折に宿った地とを一語に重ねる。
 三句「旅枕」は、旅先での寝ることをいい、祭の折に神館に宿ったことを指す。
 四句「ほのかたらひし」の「ほの」は、ほのかに、の意で、初句の「ほととぎす」と音を響き合わせる。「かたらふ」は鳴き交わすことをいう。
 結句「空ぞ忘れぬ」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ぬ」で結ぶ係り結びである。ほととぎすの声を聞いた空の記憶を、斎院の日々への懐旧として詠んでいる。

そのかみ:その昔の意の「其の上」と、賀茂の「神山」を掛ける
いつき:神に仕える斎院、斎宮
かたらふ:親しく語り合う。鳥が鳴き交わす
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
前の歌
神代にはありもやしけん桜花 今日のかざしに折れるためしは
次の歌
立ち出づる名残ありあけの月影に いとど語らふほととぎすかな