うち渡す遠方人に言問へど
答へぬからにしるき花かな
- 歌の意味
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見渡す遠くの人に問いかけてみたけれど、答えないことで、かえってはっきりとわかる花であることよ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1490
詞書「五月ばかり物へまかりける道に、いと白くくちなしの花の咲けりけるを、かれは何の花ぞと人に問ひ侍りけれど申さざりければ」
夏を詠む一連の八首目である。遠くの人に花の名を問うても答えないことで、かえってそれとはっきりわかる花だと詠む。詞書によれば、五月ごろ出かけた道で、真っ白にくちなしの花が咲いているのを見て、あれは何の花かと人に尋ねたが答えなかったので詠んだ歌である。
作者の「小弁」は、平安時代中期の女房歌人である。
初句と二句は、『古今和歌集』の旋頭歌「うち渡す遠方人にもの申す我そのそこに白く咲けるは何の花ぞも」を踏まえる。
初句「うち渡す」は、はるかに見渡す、の意である。『古今和歌集』の旋頭歌の初句をそのまま用いている。
二句「遠方人に」は、遠くにいる人をいう。本歌で白い花の名を問いかけた相手を受けている。
三句「言問へど」は、逆接の「ど」で、問いかけたけれど、の意である。
四句「答へぬからに」の「からに」は、…ことによって、の意である。答えないことが、そのまま「口無し」を示すという機知である。
結句「しるき花かな」は、はっきりとわかる花だ、と詠嘆する。くちなしの名を口無しに重ね、前歌の菖蒲の「あやめ」に続いて、花の名にかけた言葉の遊びを置いている。
をちかたびと:遠くにいる人
くちなし:梔子。夏に白い花を咲かせ、口無しに通わせて詠まれる
しるし:はっきりしている。明白である
- 作者
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小弁
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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梅が枝にをりたがへたるほととぎす 声のあやめも誰かわくべき
- 次の歌
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五月雨の空だに澄める月影に 涙の雨は晴るる間もなし