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五月雨の空だに澄める月影に
涙の雨は晴るる間もなし

歌の意味
五月雨の降る空でさえ晴れて澄んでいる月の光のもとで、私の涙の雨は晴れる間もない。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1491

詞書「五月雨の空晴れて月明く侍りけるに」
 夏を詠む一連の九首目である。五月雨の空でさえ晴れて月が澄んでいるのに、自分の涙の雨は晴れる間もないと詠む。詞書によれば、五月雨の空が晴れて月が明るかった折に詠んだ歌である。
 作者の「赤染衛門」は、赤染時用の娘である。大江匡衡の妻となり、藤原道長の妻の倫子やその娘の上東門院に仕えた。

 初句「五月雨の」は、陰暦五月の長雨をいう。梅雨の頃の空を示す。
 二句「空だに澄める」の「だに」は、…でさえ、の意である。長雨の続く空でさえ晴れて澄んでいることを強調し、「る」は存続の助動詞である。
 三句「月影に」は、晴れた空に澄む月の光をいう。
 四句「涙の雨は」は、涙を雨にたとえた語で、初句の「五月雨」と対をなす。晴れた空の雨と、晴れない涙の雨とを対比する。
 結句「晴るる間もなし」は、空は晴れても涙は晴れる間がない、と言い切る。空の晴れと心の晴れなさを対照させ、次歌の五月雨の歌へとつないでいる。

さみだれ:陰暦五月頃に降り続く長雨
作者
赤染衛門
出典
新古今和歌集
前の歌
うち渡す遠方人に言問へど 答へぬからにしるき花かな
次の歌
五月雨は真屋の軒端の雨そそき あまりなるまで濡るる袖かな