古典和歌stream

独り寝る宿のとこなつ朝な朝な
涙の露に濡れぬ日ぞなき

歌の意味
独り寝をする家の常夏の花は、毎朝毎朝、涙の露に濡れない日はない。独り寝の床もまた、涙に濡れない日はない。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1493

詞書「題しらず」
 夏を詠む一連の十一首目である。独り寝をする家の常夏の花も、その床も、毎朝涙の露に濡れない日はないと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「華山院御歌」は花山天皇である。冷泉天皇の皇子で、在位二年ほどで出家して退位し、以後は法皇として諸国を修行した。

 初句「独り寝る」は、独りで寝ることをいう。共寝する人のない寂しさを示す。
 二句「宿のとこなつ」の「とこなつ」は、撫子の別名の「常夏」と、寝床の「床」を掛ける。庭の花と、独り寝の床とを一語に重ねる。
 三句「朝な朝な」は、毎朝毎朝、の意である。同じ語を重ねて、日ごとに続く嘆きを示す。
 四句「涙の露に」は、涙を露にたとえた語である。常夏の花に置く露と、床を濡らす涙とを重ねる。
 結句「濡れぬ日ぞなき」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「なき」で結ぶ係り結びである。前の二首の五月雨と涙に続き、夏の花の常夏に涙の露を置いて、次歌の撫子へとつないでいる。

とこなつ:撫子の別名の「常夏」と、寝床の「床」を掛ける
あさなあさな:毎朝毎朝
作者
花山院
出典
新古今和歌集
前の歌
五月雨は真屋の軒端の雨そそき あまりなるまで濡るる袖かな
次の歌
よそへつつ見れどつゆだに慰まず いかにかすべきなでしこの花