よそへつつ見れどつゆだに慰まず
いかにかすべきなでしこの花
- 歌の意味
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この撫子の花をあなたになぞらえて見ても、少しも心は慰まない。どうしたらよいのだろう、いつくしんだわが子をしのばせるこの撫子の花を。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1494
詞書「贈皇后宮に添ひて春宮に候ひける時、少将義孝久しく参らざりけるに、撫子の花につけてつかはしける」
夏を詠む一連の十二首目である。撫子の花をわが子になぞらえて見ても少しも慰まない、どうすればよいのかと詠む。詞書によれば、作者が娘の贈皇后宮に付き添って春宮に仕えていた頃、子の少将義孝が久しく訪れなかったので、撫子の花につけて贈った歌である。
作者の「恵子女王」は、代明親王の娘である。摂政藤原伊尹の妻で、義孝や懐子の母にあたる。
詞書の「贈皇后宮」は伊尹の娘の懐子で、冷泉天皇の女御となり、花山天皇を生み、没後に后の位を追贈された。「少将義孝」は伊尹の子の藤原義孝で、右近衛少将となったが、若くして没した。
初句「よそへつつ」は、なぞらえながら、の意である。撫子の花を、会えない子になぞらえて見ている。
二句「見れどつゆだに」の「つゆ」は、少しも、の意に、撫子の縁語の「露」を掛ける。
三句「慰まず」は、心が慰められないことをいい、ここで三句切れとなる。
四句「いかにかすべき」は、係助詞「か」を受けて連体形「べき」で結ぶ。どうしたらよいのか、と嘆く。
結句「なでしこの花」は体言止めである。「なでしこ」は、花の「撫子」と、撫でいつくしんだ子の意の「撫でし子」を掛ける。前歌の常夏と同じ花を、ここでは母の子を思う心に重ねている。
なでしこ:花の「撫子」と、撫でいつくしんだ子の意の「撫でし子」を掛ける
つゆ:少しもの意と、「露」を掛ける
よそふ:なぞらえる。たとえる
- 作者
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恵子女王
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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独り寝る宿のとこなつ朝な朝な 涙の露に濡れぬ日ぞなき
- 次の歌
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おもひあらば今宵の空は訪ひてまし 見えしや月の光なりけん