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おもひあらば今宵の空は訪ひてまし
見えしや月の光なりけん

歌の意味
本当に思いの火があるのなら、雨の降る今宵の空にこそ訪ねて来るはずだ。あの夜に見えた光は、月の光にすぎなかったのだろうか。
鑑賞
巻第十六 雑歌上 1495

詞書「月明く侍りける夜、人の蛍を包みてつかはしたりければ、雨の降りけるに申しつかはしける」
 夏を詠む一連の十三首目で、夏の歌の終わりである。思いの火があるなら雨の今宵こそ訪ねて来るはずで、あの夜に見えた光は月の光だったのかと詠む。詞書によれば、月の明るい夜に人が蛍を包んで贈ってきたので、雨の降った夜に申し送った歌である。
 作者の「和泉式部」は、大江雅致の娘である。橘道貞の妻となって和泉式部と呼ばれ、のちに為尊親王、敦道親王と恋愛関係を結んだ。上東門院にも仕えた。

 初句「おもひあらば」の「おもひ」は、「思ひ」と、蛍の光の「火」を掛ける。蛍を贈ってきた相手の心を、蛍の火になぞらえて問う。
 二句「今宵の空は」は、雨の降る今夜の空をいう。月の明るい夜ではなく、雨の夜にこそ訪れるべきだとする。
 三句「訪ひてまし」は、反実仮想の「まし」で、訪ねて来るはずだ、の意となる。思いがあるなら来るはずなのに来ないことを責めている。
 四句「見えしや月の」は、係助詞「や」で問いかける。月夜に見えた蛍の光を指している。
 結句「光なりけん」は、係助詞「や」を受けて連体形「けん」で結ぶ係り結びである。あの光は蛍の思いの火ではなく、月の光にすぎなかったのかと、相手の思いの浅さを皮肉っている。

おもひ:「思ひ」と「火」を掛ける
とふ:訪れる。見舞う
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
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よそへつつ見れどつゆだに慰まず いかにかすべきなでしこの花
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