秋や来る露やまがふと思ふまで
あるは涙の降るにぞありける
- 歌の意味
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秋が来たのか、露と見まがうのかと思うほどに袖が濡れているのは、実は涙が降っているのであった。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1498
詞書「業平朝臣の装束つかはして侍りけるに」
初秋を詠む一連の三首目で、一連の終わりの歌である。秋が来たのか、露と見まがうのかと思うほど袖が濡れているのは、涙が降っているのだったと詠む。詞書によれば、在原業平が装束を贈ってきた折の歌である。
作者の「紀有常朝臣」は、紀名虎の子である。在原業平の妻の父にあたる。
この贈答は『伊勢物語』第十六段にも見え、年老いて妻と別れた有常に、業平が衣装を贈ったことへの礼の歌として語られている。
初句「秋や来る」は、係助詞「や」の疑問で、秋が来たのか、の意である。
二句「露やまがふと」は、露と見まがうのか、の意である。本巻の第千四百九十六首の三句「まがふとも」と同じく、露と涙のまがいを詠む。
三句「思ふまで」は、そう思うほどに、の意で、袖の濡れの甚だしさを示す。
四句「あるは涙の」は、袖が濡れているのは涙の、の意である。露と思ったものの正体を明かしている。
結句「降るにぞありける」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びである。涙を雨のように「降る」と表し、業平の心遣いに感じて流す涙を示して、初秋の一連を結んでいる。
まがふ:入りまじって見分けがつかない
しやうぞく:衣服。装い
- 作者
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紀有常
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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袖の浦の波吹き返す秋風に 雲の上まで涼しからなん
- 次の歌
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めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし夜半の月影