頼めこし人をまつちの山風に
さ夜更けしかば月も入りにき
- 歌の意味
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来ると約束してあてにさせてきた人を待ち続けて、待乳山の山風の中で夜が更けたので、月も山に入ってしまった。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1518
詞書「能宣朝臣、大和国待乳の山近く住みける女のもとに、夜更けてまかりて逢はざりけるを恨み侍りければ」
月に人を思う一連の五首目である。来ると約束した人を待ちわびるうちに夜が更け、待乳山の山風の中で月も山に入ってしまったと詠む。詞書によれば、大中臣能宣が大和国の待乳山の近くに住む女のもとへ夜更けに訪れて会えなかったのを恨んだので、女が答えた歌である。
作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。
詞書の「能宣朝臣」は大中臣能宣で、梨壺の五人の一人として『後撰和歌集』の撰集に携わった。待乳山は大和と紀伊の境にある山で、歌枕として詠まれた。
初句「頼めこし」は、あてにさせてきた、の意である。訪れを約束しておきながら遅れた能宣を指す。
二句「人をまつちの」の「まつち」は、人を「待つ」意と、地名の「待乳」を掛ける。
三句「山風に」は、待乳山に吹く山風をいう。待つ間の寂しさを示す。
四句「さ夜更けしかば」は、過去の「き」の已然形に「ば」を添えた確定条件で、夜が更けたので、の意である。「さ」は語調を整える接頭語である。
結句「月も入りにき」は、月も山に入ってしまった、の意である。月が入ったことに、待ちくたびれて自分も寝所に入ったことを重ね、会えなかったのは遅れて来た相手のせいだと切り返している。
まつち:「待つ」と、地名の「待乳」を掛ける
たのむ:あてにさせる。期待させる
さよ:夜。「さ」は語調を整える接頭語
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
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天の原はるかにひとりながむれば 袂に月の出でにけるかな
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月見ばと言ひしばかりの人は来で 真木の戸たたく庭の松風