暁の月見んとしも思はねど
見し人ゆゑにながめられつつ
- 歌の意味
-
暁の月を、特に見ようと思っているわけではないけれど、かつて逢った人のために、つい眺めてしまうことだ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌上 1527
詞書「題しらず」
有明の月を詠む一連の七首目である。暁の月を見ようと思っているわけではないが、かつて逢った人ゆえに、つい眺めてしまうと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「華山院御歌」は花山天皇である。冷泉天皇の皇子で、在位二年ほどで出家して退位し、以後は法皇として諸国を修行した。
初句「暁の」は、夜明け前のまだ暗い頃をいう。恋人たちが別れる時刻でもある。
二句「月見んとしも」の「しも」は強意で、特に見ようとも、の意である。
三句「思はねど」は、逆接の「ど」で、思わないけれど、の意となる。
四句「見し人ゆゑに」は、かつて逢った人のために、の意である。暁の月が、その人と別れた朝を思い出させることを示す。
結句「ながめられつつ」は、自発の「らる」に反復の「つつ」を添え、自然と眺めてしまう、の意となる。前歌の「ながめわびぬ」と同じく「ながむ」を用い、月を見る心が人の思い出に向かうことを示している。
ながむ:物思いにふけりながら見やる
あかつき:夜明け前のまだ暗い頃
- 作者
-
花山院
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
ながめわびぬ柴の編戸のあけがたに 山の端近く残る月影
- 次の歌
-
有明の月ばかりこそ通ひけれ 来る人なしの宿の庭にも