思ひきや別れし秋にめぐり逢ひて
またもこの世の月を見んとは
- 歌の意味
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思いもしなかった。病に沈んで世を捨てた別れの秋に、再びめぐり逢って、またこの世の月を見ようとは。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1531
詞書「秋の暮れに病に沈みて世をのがれにける、又の年の秋、九月十余日、月くまなく侍りけるによみ侍りける」
月にわが身を思う一連の一首目である。病に沈んで世を捨てた別れの秋に再びめぐり逢い、またこの世の月を見ようとは思いもしなかったと詠む。詞書によれば、秋の暮れに重い病のために出家した翌年の秋、九月十日過ぎに月が曇りなく照っていた折に詠んだ歌である。
作者の「皇太后宮大夫俊成」は藤原俊成である。藤原俊忠の子で、定家の父にあたる。皇太后宮大夫を務め、安元二年(1176)に出家した。『千載和歌集』の撰者である。
初句「思ひきや」は、過去の「き」に反語の「や」を添えた形で、思っただろうか、いや思いもしなかった、の意となる。ここで初句切れとなり、下句から倒置で受ける。
二句「別れし秋に」は、病に沈んで世を捨てた前年の秋をいう。この世との別れを覚悟した秋である。
三句「めぐり逢ひて」は字余りの句で、再び同じ季節に出会うことをいう。本巻の第千四百九十九首の初句「めぐり逢ひて」と同じ句で、「めぐる」は月の縁語でもある。
四句「またもこの世の」は、再びこの世の、の意である。死を覚悟した身が、なおこの世にあることを示す。
結句「月を見んとは」は、初句の「思ひきや」の内容を倒置で最後に置く。生きながらえて再び月を見る感慨を詠み、ここから月にわが身の老いや昔を思う歌が続く。
くまなし:曇りや陰がない
よをのがる:出家する。俗世を離れる
- 作者
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藤原俊成
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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すむ人もあるかなきかの宿ならし 蘆間の月の漏るにまかせて
- 次の歌
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月を見て心浮かれしいにしへの 秋にもさらにめぐり逢ひぬる